アトピー性皮膚炎(あとぴーせいひふえん)について

2022年10月05日

「アトピー性皮膚炎」は、かゆみの強い湿疹を慢性的に繰り返すやっかいな皮膚病です。しかし、病気を理解し、治療を継続して病状をコントロールすることにより、症状が落ち着いてほとんど出ない状態(寛解:かんかい)に導くことが可能です。

症 状: 皮膚は全体的に乾燥しており、体のところどころにかゆみの強い湿疹(赤いブツブツ)が出来て、よくなったり悪くなったりを繰り返します。湿疹がさらに悪化するとジクジクしたり、皮膚がゴワゴワと厚く硬くなってかゆみが慢性的に続きます。
年齢によって、部位や症状が特徴的に変化します。
【乳児期】 頭や顔の赤くジクジクした湿疹からはじまり、次第に全身の各所に湿疹があらわれます。ただし、乳児にはアトピー性皮膚炎以外にもさまざまな皮膚病がおこりやすいため、すぐにアトピー性皮膚炎と診断はしません。症状が数ヶ月続いた場合に、アトピー性皮膚炎を疑います。
【幼・小児期】 皮膚が全体に乾燥し、カサカサします。首、ひじ、膝や手足の関節の内側に湿疹があらわれたり、皮膚がゴワゴワと厚くなることがあります。
【青年期・成人期】 皮膚は乾燥し、顔、首から上半身に多く湿疹があらわれる傾向があります。皮膚を掻いたりこすり続けることで、ゴワゴワと厚くなったり(苔癬化:たいせんか)、ゴツゴツとしたしこり(痒疹:ようしん)が出来ることがあります。

原 因: アトピー性皮膚炎の原因は「遺伝的な皮膚の体質」「アレルギー」が関与しているといわれています。
アトピー性皮膚炎の方の皮膚は、全体的に乾燥しておりカサカサしています。その原因は皮膚の脂や保湿成分が生まれつき少ないため水分が保持できないためと考えられています。またこれにより皮膚の細胞間に隙間が生じてバリア機能が弱くなり、アレルギーの原因となる異物(ダニ、ホコリ、花粉や微生物など)が侵入しやすく、また汗や引っ掻きなどの刺激に弱くなります。これらの刺激により炎症が生じ湿疹となり、かゆみを感じます。かゆいため引っ掻くとさらに炎症が強くなりさらにかゆみが強くなるという悪循環に陥り、慢性化していきます。

治 療: 治療は「薬物療法」、「スキンケア」、「悪化因子の除去」が主体です。

【薬物療法】 皮膚炎の炎症を抑えるためには、ぬり薬であるステロイド外用薬が主体となります。ステロイド外用薬には多くの種類があり強さが異なるため、ぬる部位や症状によって使い分ける必要があります。ステロイド以外の外用剤として、プロトピック軟膏(タクロリムス)、コレクチム軟膏(JAK阻害薬)、モイゼルト軟膏(PDE4阻害薬)があります。最近ではこれらの外用剤を効果的に使用して、症状の出る前から皮膚の安定した状態を維持するプロアクティブ療法が主流になりつつあります。

また、かゆみを抑えるために抗アレルギー剤(または抗ヒスタミン剤)の内服を併用すると治療効果が上がることがわかっています。

他にナローバンドUVB」という有効な紫外線をあてる治療が普及してきています。かゆみと炎症を効果的に抑えますが、週に1回程通院する必要があります。当院でも多くの患者様が利用されております。

さらに最新の治療として、アトピー性皮膚炎のおおもととなっている化学物質を選択的にブロックする「デュピクセント」という注射薬が登場しました。既存の治療で効果不十分な中~重症の方が適応となります。当院でも多くの患者様が使用しており、高い効果をあげております。ご希望の方は受診時にご相談ください。

【スキンケア】 スキンケアを続けることにより、アトピー性皮膚炎の症状悪化を予防して落ち着いた状態を維持しやすくします。皮膚を清潔にして保湿することがスキンケアの基本です。皮膚の清潔保持のため連日の入浴は重要です。刺激の少ない石鹸でやさしく丁寧に洗いましょう。
入浴、シャワーの後に保湿剤を全身に塗ります。保湿剤も様々な種類があるので、医師と相談して決めると良いでしょう。治療薬で炎症を抑えると共に、スキンケアをきちんと行うことが治療の大原則です。

【悪化因子の除去】 悪化因子の代表はダニ、ホコリ、汗、摩擦などです。ダニ、ホコリ対策として、掃除をこまめにして部屋をいつも清潔に保ちましょう。またホコリっぽい場所で作業した後や汗をかいた後は早めにシャワーで洗いながすようにしましょう。シャワーが浴びれない環境では、汗や汚れをこまめにおしぼり等でふきとるだけでもかゆみや皮膚炎の予防になります。
皮膚に摩擦が加わると皮膚炎が悪化します。爪を短く切り、なるべく掻かないように気をつけましょう。また肌着など直接肌に触れる衣類は木綿などのやわらかくて刺激の少ないものにしましょう。
ストレスが多いと引っ掻き行動が多くなることがわかっています。ストレスをためないよいうに気分転換をするのも大切です。

アトピー性皮膚炎は、薬物療法とスキンケアを正しく行うことで、ほとんどの場合、症状をコントロールすることができます。そのためにはひとりで悩まず、まずは皮膚科専門医に何でも相談してください。病気や治療に関する説明をしっかり聞き、主治医との信頼関係を築くことが大切です。