多汗症(たかんしょう)について

2021年08月27日

汗は体温調節などで私たちに必要不可欠なものです。しかし必要以上に汗が出て人目が気になるなど、日常生活で困るほど汗が出る状態を「多汗症」と言います。

どんな病気?
多汗症は、健康な人に発生する「原発性多汗症」と原因になる病気があって生じる「続発性多汗症」があります。また全身の汗が増加する「全身性多汗症」と体の一部分のみに汗が増加する「局所性多汗症」があります。原発性局所性多汗症は手のひら、足の裏やワキという限局した部位から両側に過剰な発汗がみられ、幼少児期ないし思春期頃に発症します。

原 因
原発性多汗症の原因はまだはっきりしたことはわかっていませんが、発汗を促す交感神経の関与や遺伝の可能性も疑われています。
続発性多汗症は感染症、甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患、褐色細胞腫などの腫瘍、中枢神経疾患、膠原病などが原因になっていることがあります。

治 療
続発性多汗症の場合はまず、原因となっている疾患の治療を行います。

原発性多汗症の治療を以下に挙げます。

外用治療: ワキの多汗症に対しては汗を出す指令をブロックする働きのあるエクロックゲルが保険適応となっております。また保険外の外用薬として、20~30%の塩化アルミニウム液があります。

イオン導入: 患部を水道水に浸して微弱な電流を流す方法です。手のひら、足の裏には有効な治療法ですが、1回の治療に30分以上かかり週に1~3回の通院が必要です。(多汗症用のイオン導入は現在当院では採用しておりません。)家庭用治療器の「ドライオニック」という製品がインターネットで購入可能であり、自宅での治療が可能です。

ボトックス局注療法: 手のひらやワキに2cm間隔でA型ボツリヌス菌毒素製剤を局所注射します。1週間程で汗の量が減少し、約6ヶ月間持続します。ワキの多汗症に対しては保険適応がありますが、他の部位は保険診療でないため数万円以上の高額な医療費がかかります。

内服薬: 抗コリン剤の一つであるプロバンサイン(臭化プロバンテリン)という内服薬が保険適応があります。口の渇きや便秘、眠気などの副作用があります。

胸部神経遮断術(ETS): 手のひらの多汗症に対して、他の治療法で効果がない場合適応となります。内視鏡で胸部の交感神経節を切除する方法です。欠点として多くの人に代償性多汗(たいしょうせいたかん)という体の他の部位(背中や腹など)に多汗が現れることがあります。

これらの治療にはそれぞれ一長一短があり、治療を行っている施設も限られます。まずは皮膚科を受診してご自身の症状と治療方針を相談してみてください。